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Monday, March 14, 2005

偉大な走る人たち

ホピの国の歩き方 補遺

前回「ホピの国の歩き方」で、ホピの土地へ行く一番現実的な方法は車を使うことと書いた。おそらくこれ以外に選択肢はないと思われる。「徒歩とか馬とか馬車なども考えられなくはない」と書きはしたものの、「アメリカのサハラ砂漠」と形容されたこともある土地であるわけで、わたしにはとても耐えられないと思う。この軟弱さを鼻の先で嘲笑うのがネイティブ・アメリカンのご先祖さまたちである。

ニューメキシコで見つけた
絵はがき
indianpcs
今でこそ彼らも自動車を使うが、19世紀まで、ホピの人たちはこの大地を歩いて、あるいは走って往き来していたのである。1908年にアメリカで刊行された本に『Learning from the Indians』というものがある。著者はワートン・ジェイムス(George Wharton James)という人物で、アメリカ南西部でインディアンと共に暮らして学び続けた人らしい。この本は1973年に復刻されていて、小生は1979年頃にサンタフェの町で偶然に入手した。

この本の中に「偉大な歩く人としてのインディアン」という記述がある。インディアンたちの戸外生活にふれたところで彼はこう書き記した。

「インディアンたちは偉大な歩く人であり、偉大な走る人であり、偉大なる馬の乗り手であり、山岳地帯や峡谷においては偉大な登山家である。インディアンたちが歩くのは必要に迫られてのことではあるが、同時に彼らは歩くことに楽しみや喜びも見いだしている。(中略)4キロぐらい歩くのはなんでもない。あまりにも簡単に歩き通すので端で見ていると楽しんでいるかのようにすら見える」

サード・メサのオライビやセカンド・メサのムスンヌビのトウモロコシ畑で農作業を終えた後、ホピの国の西のはずれに近いモエンコピにある自分の家までの80キロ以上の道のりを、熱く焼けた沙漠の中を丸一日かけて走って帰宅するホピの人たちも珍しくはなかったと、ワートン・ジェームズは驚嘆したように書いている。

「一度彼らの帰る途中を写真に撮影しようと考えて、往復で160キロにもなる長距離ランニングのゴール近くで待ち受けたことがあるのだけれど、わたしが見た老人はその顔にいささかも疲れの表情は見せてはいなかった」

他にもホピの人たちの健脚ぶりについてこんな記述もある。

「わたしは何度かホピの若者に1ドルほどの金を与えて、ファースト・メサのオライビの村から東のキームス・キャニオンまで、およそ120キロほどを走って手紙を届けてもらったことがある。彼は120キロを走ってわたしの手紙を先方に届け、そのまま先方からわたし宛の手紙を受け取ると、再び120キロを走って帰ってきた。所要時間は36時間であった」

当時、オライビの村には、健脚でならしたクワウェンティワという男がいて、サード・メサのオライビから、西のはずれのモエンコピまでいき、そこから今度はサード・メサ、セカンド・メサとホピの国を突っ切ってファースト・メサのワルピにいき、さらにそこから出発地だったサードメサのオライビに戻るまでのおよそ150キロを24時間で走破したと言うから、驚くではありませんか。数字だけ聞いていると簡単そうに聞こえるかもしれないけれど、灼熱の沙漠の中を走るんだぜ。しかもなるほど彼は健脚で知られていたかもしれないが、同じようなことを苦とも何とも思わずにみんなやっていたのだから、現代人の軟弱さが知れようと言うもの。

しかもこれはホピの人たちに限ったことではないのだな。グレイトベイスン大砂漠に暮らしてきたほとんどの部族の人たちが、迷子になることもなく、道なき沙漠を走って往き来するのを苦にも何とも思わずに楽しむ風情まで見せていたという。まちがっても走ってホピの国まで行こうなどとは考えないでくださいね。

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