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Saturday, February 26, 2005

フライド・ブレッド・ブルース

rfrybreadイティブ・アメリカンを代表する食べものについて今回は書こうと考えた。いったいそれはなんだとあなたは思いますか? とにかくアメリカ・インディアンといったらこれを忘れてはいけないとされている定番中の定番の食べもの。各地で開かれるパウワウでも、インディアン・ロディオ大会でも、必ずこれが出される。部族を越えて老いも若きもこの食べものがみんなに好かれているわけ。

それがインディアン・フライド・ブレッド。あるいはフライド・インディアン・ブレッドと呼ばれるもの。ファースト・フードの極めつけみたいな食べ物だ。作り方は簡単。小麦粉とラードと塩少々とベーキング・パウダー、それからぬるま湯。これを静かに混ぜて耳たぶぐらいの硬さになったらそれをしばらく寝かせておく。ふきんをかけておくといい。これを手のひらにのるぐらいのボールに切り分けたものを手のひらぐらいの大きさの平べったい丸に手でのばして、これを油で揚げる。真ん中がふくらんでふわふわのパンのようになるから、これに蜂蜜をたっぷりとかけて、ハーブティーなんぞと一緒に熱々でいただく。うーん、うまー。これぞインディアンの醍醐味というやつ。家々によって、リザベーションによっても、多少作り方は違うけれど、北アメリカ中どこに行ってもこれだけは必ず食べられるインディアン・フードというか、インディアンのソウル・フードだ。

ところが、すべてのインディアンが大好きなこのフライド・ブレッドに正面からかみついた女性が登場したから、ネイティブの人たちの世界にちょっとしたさざ波が起きている。シャイアンとマスコーギーの両方の血を受け継ぎ、現在ワシントンDCでモーニングスター研究所(The Morningstar Institute)というネイティブ・ピープルのための教育などの研究を行う機関の所長をしているスーザン・ショーン・ハルホ(Suzan Shown Harjo)女史がそのひとである。彼女はアメリカ・インディアンのための日刊新聞にときおりコラムなどを寄稿しているかなりの著名人だが、彼女がある記事のなかで「自分は二度とインディアン・フライド・ブレッドを食べないことを誓うし、みんなにも食べてほしくない」と書いたのだ。それは油をいっぱい使ったとにかく不健康な食べ物であり、「姿を変えた火の水(アルコール)のようなものだ」と。かつてアルコールによって自分たちの国を失い、今はフライド・ブレッドによって最後の砦である健康まで失われようとしていると。

とくにフライド・ブレッドをたくさん食べているのが、南西部に暮らすプエブロ、ナバホ、アバッチの人たちで、当然ながらこの人たちからいっせいにブーイングが上がっている。ほとんどの部族の人たちがこれを大好きなのだが、とりわけプエブロの人たちはこれに目がない。ナバホとズニの混血で2003年のミス・インディアンのニューメキシコ代表も「わたしの大好物」としてフライド・ブレッドを真っ先にあげているほどだ。

だがしっかり覚えておかなくてはならないのだが、フライド・ブレッドは、ネーティブ・アメリカンの伝統食などではない。インディアンの歴史にフライド・ブレッドは一度も登場しない。それはきわめてリザベーション的な急場しのぎの食べ物なのだ。国土が占領されて住民たちがことごとく強制収容所に収監された時、戦勝国の合衆国政府が緊急生活援助物資として小麦粉と塩と鉄鍋を送り込んだことから、インディアン・フライド・ブレッドは誕生した。とりあえず子供たちや家族になにか腹にたまるものを食べさせないといけない状況に追い込まれていたリザベーションのなかのお母さんたちが良くこねた小麦粉と火にかけられたラードをもちいて考え出した苦肉の策の食べ物がこのフライド・ブレッドだったわけ。それが100年も経たないうちにネイティブの人たちの大好物になってしまうとは、キリストさまはご存じだったのだろうか?

現代のインディアン・リザベーションの最大の健康問題がいわゆる三大成人病のひとつである糖尿病で、これによって命を落とす人たちが近年急増しているその最大の理由が、甘いものをたっぷりかけて食べる油一杯のフライド・ブレッドだとスーザン女史は指摘したわけ。実際のところ子どもたちの肥満も深刻だ。小生が足繁くいろいろなリザベーションに顔を出していた70年代後半から、このことはかなりささやかれてはいた。インディアンの最大の問題は、アルコールだけでなく、伝統的な生活のスタイルを喪失したことに起因する食生活全般にあるわけだから、可能な限りもういちど伝統的な食(トウモロコシやカボチャや豆とすこしの肉、魚)に戻ろうと主張する人たちとも何度か会ったことがある。しかし伝統的な食生活に帰るためには、それを可能にする生活のスタイルを取り戻さなくてはならず、リザベーションのような見えない塀に囲まれた牢屋のなかでは、とてもじゃないがそうした生活ができるわけもないのである。だからそういう人たちのかけ声が、一般のインディアンの人たちの耳に届くことはまれだった。とにかくなにか腹にたまるものが必用な人たちがいまだにたくさんいるのも現実だ。

彼らは日々ファースト・フード(ソーダ、フライド・ポテト、ハンバーガー)か大好物のフライド・ブレッドにかぶりついて舌鼓を打っている。今後ネイティブの人たちがフライド・ブレッドを食べる量を減らすことができるかどうかが、リザベーション全体の生存を賭けた新たな戦いとなるかもしれない。食生活の改革が急務なのである。スーザン・ショーン・ハルホ女史がこの運動を起こした背景には、インディアン・フライド・ブレッドを自分たちの伝統のひとつと考え、一族を象徴する食べ物と見る子どもたちが増えていることに危機感を感じたためだという。しかしと彼女は言っている。「熱つあつを食べてみるとやはりおいしいから、それに反対するキャンペーンを広めるのも大変なのよね」

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Comments

考えさせられる記事でした。最初は単純にフライド・ブレッドを食べたいなぁと、思いましたが・・・ アルコールのように体に悪いとは思いませんでした。フライド・ブレッドを食べないのではなく、フライド・ブレッドを改善する事はできないのでしょうか?糖分と油分を軽減させ、体に良いフライド・ブレッドはできないのでしょうか?やはり、文化のようになっているものを変えるには難しいと思います。しかし、スーザン・ショーン・ハルホさんの気持ちも良く分かります。
全ての人が喜ぶ結果になる事を願います。
ミタケオアシン・・・

Posted by: 大盛 良一 | Saturday, February 26, 2005 at 01:26 PM

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