アメリカでインディアンと出会う
現在アメリカ合衆国のなかには600を超える部族が、カナダでは数百をくだらない数のネイティブの部族が生き残っています。これらのなかにはカリフォルニアのいくつかの部族のように構成人員が10名に満たなくて、ほとんど絶滅しかかっている「国」もないわけではありませんが、部族によっては人口数千を数えるものもかなりの数にのぼります。これはアメリカ合衆国だけなのですが、より詳しい部族の人数が知りたい方は西暦2000年の部族ごとの国勢調査の結果がPDFファイルとしてここに公表されていますのでそちらをごらんください。
今ではアメリカではそれぞれの部族の人たちが暮らしている土地は「リザベーション(Reservation)」と呼ばれています。カナダでは「リザーブ(Reserve)」といいます。インディアンの若者たちはそれを簡略化して「Res(レズ)」という傾向があります。日本語では「居留地」でしょうか。ほとんどの部族が、ひとつないし複数の居留地を持っているのが普通ですが、なかにはアメリカのワイオミング州にあるウインド・リバー・リザベーションがショショーニとアラパホが共有しているように、ひとつの居留地を複数の部族でわけあっているところもあります。また部族によっては、すでにリザベーションの土地を全部失ってしまって、自分たちの土地を持たない人たちもいるほか、自分たちの暮らしていた土地の真ん中にアメリカとカナダの国境線が引かれてしまったために、リザベーションとリザーブの両方を持っている部族もあったりします。リサべーションのなかにはゆっくり歩いても数分で通り抜けられる程度の面積しかないところから、とてつもなく広大で日本列島が全部はいるぐらいの土地を有するところまでいろいろです。なかには自分たちのリザベーションを「国」と呼ぶ部族もかなりの数にのぼります。それは文字通りアメリカ合衆国のなかに存在する別の第三世界の国と認識した方がよいかもしれません。現在アメリカ合衆国でネイティブの人たちが多く暮らしているのは「インディアン・カントリー」と呼ばれている西部および南西部諸州とアラスカだと思います。
アメリカ合衆国にあるほとんどのリザベーションは観光客に対して門戸を開いています。しかし19世紀的な衣装で観光客を出迎えてくれるようなところはまずないでしょう。アメリカ合衆国に暮らしている普通の白人の人たちが西部開拓の時代の服装をしていないのと同じことです。日本だってサムライの格好をしている人がいないでしょう? 現代のインディアンのひとたちは現代的な家に暮らし、わたしたちの何ら変わらない服装をしているのが普通です。もちろん時と場所によっては、たとえば聖なる儀式が執り行われているようなところや、パウワウのような一族の人たちが寄り集まって祝い事をする社会的な行事の場では、レガリア(regalia)と呼ばれる伝統的正装を身にまとうこともあります。日本でも結婚式などのときに和服を着る人たちがいるのと同じことです。ディネ(ナバホ)の人たちのなかには今なおホーガンと呼ばれる伝統的な住居に暮らしている人たちもいますし、プエブロの人たちにも伝統的なれんが造りの集合住宅の中で暮らしている人たちがいますが、平原の民の簡易住居であるティピで日々の生活を送っている人となると、まずほとんどいません。もちろんティピはさまざまなところに建てられてはいるのですけれど。現在では「インディアン」とされる人たちのほぼ半数がリザベーションを離れ、職や自分のライフスタイルを求めて近郊の町や、遠くの大都会で暮らしています。
よく小生のところに「どこへ行けばインディアンの人たちに会えますか?」というメールや手紙がきます。直接たずねられることもあります。わたしはすべてのインディアンの部族のことに詳しいわけではありません。彼らの秘密の情報を入手できる立場にあるわけでもない。わたしはそういうときには、アメリカに行く機会があるのなら、パウワウ(Pow Wow)と呼ばれているネイティブの人たちの祭りを見に行くとよいと応える場合が多いです。パウワウはいろいろな機会にアメリカの各地で開かれています。その会場に行けば、伝統的なレガリアを身にまとったネイティブの人たちがたくさんいますし、伝統的な食べもの(フライブレッドにハーブティー)も食べられますし、さまざまな文化に触れることができるし、他では手に入らないインディアングッズもたくさん売られていたりしますし、運がよければネイティブの友達をつくることも可能だからです。
代表的なパウワウを紹介しましょう。毎年4月の最終週の週末にニューメキシコ州のアルバカーキ(Alburquerque, New Mexico)で「インディアンの国々大集合だよパウワウ(Gathering of Nations Pow Wow)」(今年は4月28日から30日までの3日間)が開催されることになっています。さらに毎年8月の中頃になると「クロウ族の祭り(Crow Fair)」(今年は8月18日から21日までの4日間)が空の大きなモンタナ州で開催されます。大平原の民の集会としてはきわめて大規模なイベントで、野営地に1000を超える数のティピが立ち並ぶ光景は一見の価値があります。パウワウの間は毎朝野営地のなかで伝統的なパレードが行われ、インディアンの人たちのロディオや、さまざまなプレゼントを配りあうギブアウェイの儀式など、たくさんの行事が行われます。こうした盛大なパウワウでなくても、6月から9月かけての北米大陸のあちこちで、ほぼ毎週末ごとにパウワウが開かれていますし、大半のパウワウが観光客の参加を認めています。プエブロの人たちのパウワウをのぞけば、ほとんどの場所でパウワウはカメラの持ち込みは基本的には認められていますが、ネイティブの人たちは許可なく写真を撮影したり、許可を求めることなくいきなり伝統的な衣装に触ることを「無礼なこと」としていますので、くれぐれもご注意ください。
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