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Monday, January 17, 2005

虹の戦士のつとめ

クリーという部族の国がカナダにあるというところから、話をはじめよう。クリーはカナダでは最大のネイティブ・グループである。北は北極圏、西はカナディアン・ロッキーから、東は大西洋岸に至るまでの広大な土地、おもに大草原をテリトリーにしてきた。現在は大部分がカナダに、一部がアメリカのモンタナ州に分かれて住んでいる。アルゴンキン語族に属し、大きく五つの方言に分かれている。


このクリーの国に、かつて「火の瞳(アイズ・オブ・ファイアー)」と呼ばれるひとりの女性が暮らしていた。彼女は年老いたときにある予言を残したことで、現代にその名をとどめることとなった。その予言とは「いつの日にか、白人の欲(クリーの言葉で『ヨ・ネ・ギ』)が原因で、川の流れの中で魚たちが死に、鳥たちが空から落ち、水という水が黒ずみ、木がもはや生えなくなるときがくる」というものだ。しかも人類の生存そのものが危うくなったとき、われわれがもう一度失われた健康を回復するために、昔から伝わる伝説や物語やさまざまな儀式や神話といった古代から部族に伝えられた習慣を守護する者たちが必要とされるときがくるだろうというのである。そして人類生存の鍵を握るその人たちはやがて「虹の戦士たち」として知られるようになると。

WORB虹の戦士のスピリットが帰ってきたときのことを、アイズ・オブ・ファイアーという名前の老婆と、町で生まれて育つ彼女の孫の少年を主人公にして物語風にしたものが、小生が翻案した『虹の戦士』(太田出版刊 1999/河出書房新社刊 1991)である。それは60年代末に公開され、70年代、80年代のアメリカに大きな影響を与えた物語である。いや、今なおアメリカはこの物語の影響下にあると言っていい。この物語は「虹の戦士」という言葉とともに心ある人たちの意識の中に定着しつつある。

「スピリットの帰還」ともともともとは題されたこの予言的な物語がどのように広まったのかについては同書の後書きに書いたのでそちらをお読みいただきたいし、物語そのものもぜひ頭の中に入れておいてほしいとわたしは願う。「虹の戦士」の物語は、次の次代を担う子供たちに虹の戦士としての役割を与えて、太古より伝わる文化遺産、祖先伝来の知恵を守護することの大切さを伝えるためのものでもあるのだから。

同じような予言が北米大陸のホピやマヤなどのさまざまなネイティブの部族に残されているので、今回は一人歩きしはじめている「虹の戦士」という言葉の意味するものと、彼らのこの惑星における勤めを、レラニー・フラー・ストーン(Lelanie Fuller Stone)という名前のひとりのチェロキー出身の薬草学者・作家の女性が、幼かったときに祖母から聞かされた話として書き記したものが手元にあるので、それを紹介することで改めて整理しておこうと考えた。話は、かつてわたしが日本語にした虹の戦士のお話のもうひとつのバージョンのようなものである。

予言は「目覚めの時の到来」「偉大な覚醒の時の到来」をどれもが伝えている。あらゆる部族のすべての人たちが、正義と、平和と、自由と、そしてこれが重要なのだが「偉大なる精霊の存在認識」とに基づく新しい秩序を形作るだろうと。

・ここで「偉大なる精霊」としているものは、英語で言うところの「the Great Spirit」のことである。このグレイト・スピリットがなにであるのかについては、今年を通してこのブログの中で幾度となく取りあげていくことになるだろうから、今のところは「この宇宙のいっさいすべてを創られた存在」ととりあえずお考え願いたい。それに対してどのような名前を与えるのも人間の勝手ではあるけれど、自分のつけた名前だけが唯一絶対のものとするような真似だけは厳にお慎み願いたい。それはまったくもってラコタの人たちが言うように「偉大なる神秘」もしくは「大いなる謎」そのものなのであり、それ以外に名のつけようのないものなのである。

   レラニー・フラー・ストーンが幼いころに祖母から聞かされた話の要約

の戦士たちは太古から残されたさまざまなメッセージを広め、すべての地球の人たちに「グレイト・スピリットの道の上での生き方」を教えることになる。今の世界がどのくらいグレイト・スピリットの道から背いてしまっているかを諭し、そのことによって「地球が病んでしまっている理由」を伝えてゆくだろう。

虹の戦士はまた、この時代を超えて存在し続けているもの(これもまたグレイト・スピリットと呼ぶべきもの)がいかに「愛」と「理解」にあふれているかを見せて、どうすれば母なる地球をもう一度美しくできるかを教えてまわるだろう。虹の戦士は人びとにこの世界を正しく歩んでゆくための「法」もしくは「原則」を与えることになる。そしてそれらの「法」も「原則」も太古の部族から伝えられてきたものであるだろう。虹の戦士は人びとに、太古から伝えられた「みなをつなげる」「愛しあう」「理解しあう」ための技を広め、地球のあらゆる地域の人たちに分け隔てなく調和を広めてゆくだろう。

太古の部族の人たちがそうであったように、虹の戦士は人びとに山の清流のような、そしていくつもの流れを集めて生命の大きな海に注ぐ大河のような、つきることのない愛とともにグレイト・スピリットにむかっての祈り方を教えてゆく。虹の戦士はたとえひとりでいても、大勢が参加する会議の中にいても、等しく喜びを感じることができるだろう。狭量な嫉妬から心は解き放たれていて、肌の色や人種や宗教を問わずすべてのヒトを愛するだろう。虹の戦士は自らのハートに幸福が入り込むのを感じるとき、すべてのいのちとひとつになることができる。その心はどこまでも清らかで、ヒトと自然とグレイト・スピリットに対する暖かさと理解と尊敬とを放射しているだろう。虹の戦士は自分の頭とハートと魂と行為とを汚れのない思考で満たしている。彼らは命を支配するもの、グレイト・スピリットそのものの美しさを探し求め、祈りとひとりであることの中に、力と美とを見つけることになるだろう。

虹の戦士の子供たちはもう一度、自然と母なる地球の宝を堪能しながら、自由に走りまわることができるようになるだろう。欲やそれに突き動かされた行為によって、肉体を汚されたり、命を失うような恐れからも解放されるだろう。川の水も再び清らかに流れゆくようになり、森は豊かで美しいものに姿を変えて、たくさんの魚や動物や鳥たちが帰ってくることだろう。植物や動物たちが持っている力が再び敬われるようになり、すべての美しきものたちの保全こそが、人間の生きるべき道となるだろう。

貧しい者や、病んでいる者、生活に困っている者には、地球に生きる兄弟姉妹たちが庇護を与えることになるだろう。そうした行いは虹の戦士たちの日々の暮らしの一部になることだろう。

ひとびとは自分たちの指導者を、政党や、偉そうだからとか、声が大きいからとか、大きなほらを吹くからとか、何度も連呼をしているからとか、罵りあうからという理由ではなく、その人間がいかなる行いをしているかを判断する太古からのやり方で選ぶようになるだろう。愛と知恵と勇気を行いで示して見せた者、すべての良き人たちのためになるつとめをなしてきて、これからもそれができるだろう人物が、指導者やチーフとして選ばれることになるだろう。その人たちは「人間の質」によって選ばれるのであり、彼らが稼いだ金の総量によって選ばれることはなくなるだろう。思慮深く献身的だった遠い昔のチーフたちのように、彼らは愛によって人びとを理解し、子供たちが周囲の者たちの愛と知恵によって教育されているかどうか見るだろう。彼らはいくつもの奇跡によってこの世界の病が癒され、健康と美が回復されることをひとびとに見せることになる。

「虹の戦士」のやらなくてはならないことはかくも多くすべてが偉大なものである。越えていかなくてはならない無知の山はとてつもなく高くそびえ、偏見と憎しみとを見つけることになるかもしれない。虹の戦士はハートを強く持ち、一途に道を進み、くじけてはならない。もう一度母なる地球に美しさと豊かさを回復させるための道の上で、彼らは同じように強い意志を持った心と頭の持ち主たちを見つけることになるだろう。

その日は近い将来必ず訪れる。そのとき、まさしく虹の戦士たちが存在してくれたおかげで、すべての部族の人たちが自分たちの文化的な遺産を保ち続けられたことが明らかになるだろう。儀式や、物語や、伝説や、神話を生かし続けている者たちの声に耳を傾けよ。その声の中に、まさにそこにこそ、彼らが守護してきた「知」が存在する。それによってわれわれはもう一度、自然と、母なる地球と、人類とが調和するところへ帰還することができるだろう。まさしく「わたしたちの生存の鍵」は、その「知」の中に見つけることができる。

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Comments

ちょうど。虹の戦士の本を。
さがしていたら。

友人のHPで。たどり着くことが出来ました。


トラックバックさせて下さい。

Posted by: nao5 | Wednesday, January 19, 2005 at 09:09 AM

ごめんなさい。

まだ初心者なので。二回もしてしまいました。

私のHPにこのお話をのせたかったんですが。

(T_T)すいません。削除お願い致します。

Posted by: nao5 | Wednesday, January 19, 2005 at 09:34 AM

 サブカルチャーのひとつに、山村でのコミューン生活のようなものがあるのはご存知のことと思います。 

 気の合う仲間同士数人で生活費の安く、自然環境に恵まれた山村に移住し、そこで有機農法や、工芸品などを生産しながら、ときおりお祭りをひらいたり、イベントを企画したりして、仲良く、豊かな生活を模索しようとするものです。

 スローライフなどの言葉の定着と共に、このような生活に、将来の理想を夢見ている方々も多いのではないかと思います。 そこで、その現実のひとつをご紹介し、人生の選択の際の情報のひとつとして役立てていただきたいと考えました。

 わたしはその中のひとつにブランクを含めて約25年ほど縁があり、開拓初期のことや、つい最近のことまでいろいろと見聞きしていて、またそこで様々な経験をしてきました。

 現在、そこには虹の戦士を自称するジャパニーズヒッピーの集落があり、グレイトスピリットの名のもとに、様々な奇行と犯罪を繰り広げています。

 わたしは、1990年にユミさんという女性によってアメリカからその村に聖なる杖がもたらされたときに、骨とう品として分解されて運ばれてきたその杖を、元どうりに復元した本人なので、このへんのいきさつはよく知っているのです。

その後、私はしばらく村を離れていたため、彼らがまさかそのような犯罪行為に手を染めているとは知らず、原始宗教の不注意な布教と、無責任な放置が、平和とは全く正反対の現実を引き起こしていることに驚愕しています。

 そこでこの経験を皆さんにもシェアし、同じような失敗や起こりうる危険をできるだけ回避し、今後の持続可能な市民社会の形成のために、生かしていただきたく、まとめてみた文章があります。  特に若い女性の方は必見です。

 本文は以下のURLにアクセスし、読んでみてください。 過激な文章も含まれますが、現実に行われたひとつの理想社会構築実験の失敗の経緯を、ぜひ今後の新たな希望の実験へと生かしていただきたく、あえて原文のままにしてあります。

それではどうぞ・・・

http://www.geocities.jp/gorgo_14/

Posted by: ゴルゴ14 | Sunday, February 13, 2005 at 01:03 PM

インディアンであるとないとにかかわらず、わたしが人間であるために最も大切なものとしているものについて、昨年書いたものが以下にありますので、どうかお読みください。
http://native.way-nifty.com/native_heart/2004/03/post_3.html

Posted by: kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Wednesday, February 16, 2005 at 08:47 PM

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Tracked on Wednesday, January 19, 2005 at 09:29 AM

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