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Thursday, December 02, 2004

コヨーテと草の人たち

テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテクーー

その日もいつものようにコヨーテが歩いています。どこまでも広がる大平原、行けども行けども続く草の海です。晴れ渡った空、白い雲。思わず歌いたくなるぐらい良い気分でした。コヨーテはその日何となく自分が一回りも二回りも偉くなったような気分でした。まるで川に鮭を呼び戻してやったのは俺さまだ!みたいな。どうだ、おいらが怪獣をやっつけてやったんだぞ、みたいな。とても自分が特別に思えるような、そんな一日でした。

テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク。

歩いているうちに、だんだん気持ちが大きくなって、そっくりかえって、テクテクテクテク。

「わっはっは。どうだい、おれさまがしてやったことは。二本足の人間だって、こうはいくまいよ」

テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テーー

いきなりどこからか声が聞こえたのです! 歌です! 歌が聞こえてきました! 誰かがどこかで歌を歌っているのです! それも軽やかな声で、やんわりと。耳を澄ますと、歌はこんなことを言っていました。

「♪わわわわわわわたしたち、せせせせせせせかいで、いいいいいいいちばん、つつつつつつつよいひと♪」

「誰だぁ、あの歌を歌ってるのは?」

コヨーテは思わず辺りを見回しました。

誰もいません。

彼はまた歩き出しました。

テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テーー

また歌が聞こえました。例の「わたしたち、世界で一番、強い人」という歌です。

「誰だぁ? 歌ってるのは?」

コヨーテが大きな声で叫びました。

でも誰もいません。

coyoteimages.jpgコヨーテは鼻先を草の海の中につっこんでクンクンクンクンとにおいをかぎました。

するとまたあの歌が聞こえました。

む! 草。根を持つ草の人。そうでした。歌を歌っていたのは一本一本の草の人たちでした!

「♪わわわわわわわたしたち、せせせせせせせかいで、いいいいいいいちばん、つつつつつつつよいひと♪」

やっぱりそうです。草の人たちがみんなで声を合わせて歌っているではありませんか。優しい声で、きつい内容のことを。

「♪わわわわわわわたしたち、せせせせせせせかいで、いいいいいいいちばん、つつつつつつつよいひと♪」

「てやんでい!」コヨーテは言いました。「なんだよただの草のくせに。はぁ? あんたらがおいらよりも強いだって? 冗談はやめの助。世界で一番強いのは、おいらだよ、コヨーテさまだよ!。嘘だと思うなら、これをみろ!」

むしゃむしゃむしゃむしゃ。コヨーテはいきなり草を束で引っこ抜いてはむしゃむしゃ食べ始めました。手当たり次第に、むしゃむしゃむしゃむしゃ。

「どうだ? ざまぁみろ、このお? うぐぐぐ、むしゃむしゃ、げぼげぼ、あああああああ、ごくり。どうだいどうだい、わかつたろ、おれさまはな、おまえたちを食っているんだぞ!」

コヨーテは矢継ぎ早に草を束で引っこ抜いてはそれを口に運んでむしゃむしゃ食べていきます。つぎつぎと。そして飲み込むたびにこう言いました。

「どうだいどうだい。これでわかったろ? おいらがどのくらい強いかってことがよ!」

しかし、そのときのことでした。コヨーテのお腹の中で、草の人たちがまたあの歌を歌い始めたのです。

「♪わわわわわわわたしたち、せせせせせせせかいで、いいいいいいいちばん、つつつつつつつよいひと。ななななぜなら、わわわわたしたち、あああああんたに、おおおおおならを、さささささせちゃうものものものものもの♪」

「へっ! なにがおならだよ。そんなものでおいらみたいな偉大なチーフがまいったりするるものか、けっ」

そう言いはなってコヨーテはまた草原を歩きはじめました。

テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テーー

ぷうっ!

しばらく歩いたところで、いきなり小さいのが一発でました。

「へっ!」コヨーテが言いました。「それだけかよ。おいらにとっちゃ、へでもないぜ」

そう言って彼は歩き続けます。でも、それからしばらくすると、また、こんどはさっきのよりも少し大きく、

ぶー!

その瞬間、コヨーテの体が少しだけ宙に浮きました。

「おっと、そうきたか。だがそんなていどではへでもない。おいらは偉大なチーフなんだぞ」

彼はさらに旅を続けました。

テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テーー

そのときいきなり次の一発が

ぶーーーーっ!

こんどのおならははんぱではありません。いきなりコヨーテの体が空に舞いあがりました。ひゅーっと宙を飛んでコヨーテはそのまま地面に

ばーん!

と墜落しました。体が地面に激突したときまた次の一発が


ぶーーーーーーーーーーっ!


再びコヨーテの体が空高く舞いあがりました。こんどは前の時よりもはるかに高く、勢いもついていました。

そうやって何度も何度も矢継ぎ早にコヨーテの体が大平原の空を飛び回る光景がしばらく遠くからも見えたそうです。

poplar.jpgコヨーテの体はもう全身アザだらけ。あるとき地面に落とされた隙を狙ってコヨーテは、何とか助かろうと近くに生えていたポブラの木の枝をかろうじてつかまえました。ポプラの木の中からも相変わらず盛大なおならの音が鳴り響きます。


ぶーーーっ!


ぶーーーーっ!




ぶーーーっ!


コヨーテの必死にしがみついているポプラの木が、おならが発射されるたびにだんだん根元からそのまま引っこ抜かれそうになりました。

ひぇえええええええーーっ! 助けて! お助けを!


その瞬間、おならがやんで、コヨーテも命拾いをしたそうです。

でも、そんなことがあったために、ポプラの木は、今でも、誰かが地面から根こそぎ引き抜こうとしたかのような姿になってしまったのです。それはコヨーテおじさんがそこで草の人たちの力をやり過ごしたことを今に伝えているのです。

テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク、テクテクテク、テクテクテク、テクテクテクテクテクテクテク。

きっと今日もコヨーテは何事もなかったかのような顔をして大平原を歩き続けていることでしょう。

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