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Tuesday, November 16, 2004

カチーナたちに会いに行きます

半年ほど前、夏至の少し前に「80体のカチーナ人形たちに会いに行きたい」としてお知らせしたことがある「アンテスとカチーナ人形——現代ドイツの巨匠とホピ族の精霊たち」という展覧会が現在兵庫県の伊丹市立美術館で現在開催されています。(12月12日[日曜日]まで。月曜日休館。午前10時から午後6時[入館は午後5時30分])

Soyal_small.jpg来月12月の冬至になるとホピの土地ではソーヤルという例大祭が行われ、そこからまた新しい一年のサイクルがはじまります。ホピの人たちにとって12月はもっとも聖なる月。だから11月の下旬は、一年のサイクルの締めくくりの時であり、またホピの村々では大祭のための準備もはじまり、精霊の世界ではソーヤルカチーナというカチーナの中のカチーナ、チーフ・カチーナが、サンフランシスコピークという高い山の頂から山道をおりてくるとされています。夏至の日を境に山に帰って休養をとっていたチーフ・カチーナが、あまりに寝過ぎたせいか大儀そうな様子で、低い声で聖なる歌など口ずさみつつやってきて、一番メインのキバを開き、カチーナの働く時がきたことを告げるのです。これはホピの人たちが今暮らしている四番目の世界にやってきたときのありさまを象徴している儀式だとも言われています。

キバというのは、地中に掘られた聖なる空間で、他のプエブロの人たちのキバは普通円形をしているのですが、ホピのキバだけは四角形をしています。構造は彼らが信じるところによるこの世界のはじまり方を象徴しています。キバの一番底辺部に小さな丸い穴が開けられていて、その穴は、ホピの人たちが、地下の「火」の世界から集団で移住してくるために伝ってきた穴とされています。この穴は「シパウ」とか「シパプニ」と呼ばれます。この出現した穴は、あのグランドキャニオンのさる場所の壁面に現実にあるのだといいますから、あきらかに彼らはコロラド川を遡つてやってきた人たちでしょう。穴から出た底面は二番目の「空気」「気」「風」「命の呼吸」の世界をあらわします。そのまわりをぐるりと囲んでいて普段は儀式の観衆が座る席になっている一段高いところが、三番目の世界で、「水」「血の流れ」をあらわしています。そしてそこからはしごを伝って四番目の世界、今わたしたちが暮らしている世界にのぼっていくのです。(キバの構造については、ホピが自分たちの祖先だと言っているアナサジの人たちのキバの構造が遺跡から細かく研究されていて、たとえば Sipapu--Chetro Ketl Great Kiva のような三次元映像でその内部をグラフィカルに見せてくれるサイトもあります。)

ちょうど今頃、新月を過ぎてすぐのころは、サンフランシスコピークの山懐のどこかにあるとされるカチーナたちのキバで、年老いたチーフ・カチーナがスピリット・ワールドへの新たな旅立ちに向けての訓辞でもしているころかもしれません。ホピの村の人たちはパホとよばれる「祈り棒」作りに精を出しはじめたころで、子供たちがそれぞれの結社に入団するためのウウチムという儀式(一年を締めくくる祭礼)がとりおこなわれています。ウウチムというのは「発芽」ということで、これはあらゆるいのちあるものが成長をはじめるための準備にはいることをあらわしているようです。このあたりのところは小生が翻訳したスピリットのある小説『輝く星』にていねいに、かつ印象深く描写されていますし、もっとホピの象徴そのものを詳細に学びたい人はフランク・ウォーターズの書いた『ホピの書』(日本語タイトル「ホピ宇宙からの聖書—アメリカ大陸最古のインディアン」徳間書店刊)に詳しく書かれています。

さて「アンテスとカチーナ人形——現代ドイツの巨匠とホピ族の精霊たち」展に話を戻しますが、ホピのカチーナ人形がこれほどまとまって日本で公開されるのはこれがはじめてのことです。ドイツ美術界の巨匠とされるホルスト・アンテスに大きな影響を与えたのが「万物に宿る精霊を表現した芸術性の高さ、時間を超越した宇宙観」(伊丹市立美術館のパンフレットから)をあらわしているホピのカチーナ人形たちでした。彼は世界的に有名なカチーナ人形のコレクターです。カチーナ人形自体は今もホピの人たちの手で作り出され続けていますが、アンテスが集めたカチーナは年代的にも技巧的にもそこに込められたスピリットにおいても重要なものばかりです。ホピの土地を訪れてもこれだけまとまってカチーナたちに会える機会はまずありません。この新しい一年のサイクルのはじまろうとしているときに、ホピのカチーナたちに会いに行くのもなかなかな体験になるのではないでしょうか。

なお11月28日(日曜日)午後2時から、小生が伊丹市立美術館1階の講座室で「ホピとはいかなる人たちか——仮面の神々/ホピ・カチーナの宇宙」と題する講演会を行います。詳しくは、伊丹美術館のホームページで確認してください。お近くにお住まいの方はぜひおいでください。講演は無料ですが、「アンテスとカチーナ人形」展の観覧券(一般700円、大学高校生350円、中学小学生100円)が必要です。


# 伊丹市立美術館トップページ
http://www.artmuseum-itami.jp/
# 伊丹市立美術館の「アンテスとカチーナ人形」展告知ページ
http://www.artmuseum-itami.jp/antes.html

この「アンテスとカチーナ人形展」は、伊丹市立美術館(10月30日〜12月12日)のあとは、岩手県立美術館(2005年4月9日〜5月22日)、いわき市立美術館(2005年5月28日〜7月3日)、神奈川県立近代美術館・葉山館(2005年7月9日〜8月28日)で開催されることがきまっています。

*注意 ここに掲載したカチーナ人形の写真は「ソーヤルカチーナ」の人形ですが「ホルスト・アンテスのコレクションとは関係ありません。この人形はホピのアーティストの人たちがリザベーションのなかでひらいているホピ・マーケットというアート・ショップののカタログに掲載されていたものです。Hopi Marketのウェッブサイトは「http://www.hopimarket.com/index.htm」にあります。このソーヤル・カチーナ人形はホピのアーティスト、フレッド・J・ロス(Fred J. Ross)氏作のものです。

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Comments

伊丹市立美術館の情報ありがとうございます。
Warriors of Rainbow を読みながら、ビィジョンを
求め続けています。
北山さまの講演会に参加したいのですが、横浜在住のため
少し迷い中です。
葉山館(2005年7月9日~)までは、待てない感じです。
北山さまのメッセージに感謝しています。

Posted by: ぴょん☆ | Tuesday, November 16, 2004 at 11:17 PM

12月4日(土曜)には東京でもトークがあります。雑穀料理人の大谷ゆみこさんのところで「スピリットを授けてくれる穀物」について、アメリカインディアンと日本人の話をするつもりです。詳細は以下のサイトで。
http://www.tsubutsubu.jp/05know/page/20041108_1.html

Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Tuesday, November 16, 2004 at 11:37 PM

はじめまして。ネイティブマインドにはじまり、ローリングサンダーなどなど北山さんの出版された本を読ませていただいて私のバイブルともなっています。
長年の念願でした北山さんとの出逢いが、伊丹・そのあとのモダナークで実現しそうで楽しみにしております。時間があればお話できる機会がありますように。

Posted by: まりこ | Wednesday, November 17, 2004 at 11:13 PM

残念ながらアンテス氏の絵画は私には理解できませんでした。
カチーナ人形はいろんな印象を受けますね。
講義も知らない事が多過ぎて、また本を読まねばと考えさせられました。
楽しい一日をありがとうございました。

Posted by: おれおふりねら | Sunday, November 28, 2004 at 09:07 PM

頭でっかちだからねえ。でも西洋の人には、あんな感じにカチーナを受け止める芸術家が結構いました。シュールレアリズムの人たちも、カチーナにただならぬものを見たようです。でも、80体のカチーナは圧巻でした。思わず声をあげて笑い出したくなるようなのがいくつもありました。あれでコレクションの半数ぐらいだと言いますから、ぜひ全体をまとめてみてみたいものです。印象に残ったのがいくつかあります。神戸で見た満月も横浜で見た満月も、同じくらいきれいな夜ですね。

Posted by: Smiling Cloud | Monday, November 29, 2004 at 12:46 AM

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Tracked on Wednesday, November 17, 2004 at 11:08 PM

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