平和の人になれるかもしれない
ここに掲載するのは「地湧社」という出版社が毎月出している『湧』という冊子に求められて書いた原稿です。『輝く星』という小説の翻訳書が刊行された直後で、本の紹介をかねる意味で書きました。この『輝く星』のオリジナルのタイトルは「真実は輝く星」といいます。ホピ・インデイアンの少年が成長していく物語で、ホピの人たちのいのちに対する考え方をアメリカ南西部の忘れがたい景観を背景にして描いた物語です。人間の成長についてタオス・プエブロのメデイスンマンが語るすてきな言葉が心に残るでしょう。翻訳者当人がいうのもおかしいですが、まるで映画を見ているようです。暴力に頼ることなく、愛と勇気で問題を解決し、ヒーローとして成長する主人公の世界を体験してください。写真はオリジナルの英語版の表紙です。
1832年の12月、現在のアメリカ南西部と呼ばれる高原砂漠地帯が、まだスペイン帝国とその支配下にあるメキシコの領土とされていたころ、ホピ・インディアンの子どもたち十数名がスペイン軍の兵隊たちによって拉致され、サンタフェの町で奴隷として売り飛ばされるという事件が起きました。『輝く星』は、そのときに誘拐されたホピのひとりの少年について描いた小説です。
ホピというとその「予言」が世界的に有名で、ホピという名前が「平和の人々」をあらわすことは広く知れ渡ってきてはいますが、実際の生き方や哲学や精神生活については、残念ながらこれまであまり知られてはいませんでした。
そのホピの国のあるアリゾナで生まれて育った女性で、ホピとも長年の親交を持ち、現在は大学で宗教学を教えるJ・プライス教授は、一九世紀に起ったその事件を下敷きに小説として描くことで、ホピもそのなかにふくまれるプエブロと呼ばれる農耕定住のネイテイブ・アメリカンの人たちの奥の深い精神生活をリアルに描いています。
武力や暴力によってものごとを解決しようとするのではなくて、幼少の時から一貫して非暴力を植え込まれたハートがあれば、愛と勇気を持って事にあたることで、人間はほんものの「ヒーロー」としての人生を生きることができるのだとするホピの人たちの教えの核心が、『輝く星』というスピリチュアルで心温まる「もうひとつの心の冒険小説」には見事に描かれています。
非暴力であるということを生き方と実践するためには、物質的な豊かさではなくて、その対極ともいえる豊かな精神性が求められますが、ホピの人たちがその豊かな精神性をどのようにして次ぎの世代に伝えてきたかを知ることができれば、わたしたちも「平和の人」になれるかもしれません。
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