地球を讃えよう
「平和利用」であれなんであれ、すべての「核利用」に反対する立場から、長年反核運動をになってきた人たちをまとめて1994年にネバダの核実験場で「核の鎖を断つ」ことを目的にシュンダハイ・ネットワーク(Shundahai Network)というネットワークを立ち上げたのがウエスタン・ショショーニの精神的指導者でメディスンマンであり、ストーリーテラーであるコービン・ハーニィ(Corbin Harney)であり、かのローリング・サンダーが最後までケアしていた沙漠の中の国が、このウエスタン・ショショーニである。
「西部ショショーニ国」は、ロッキー山脈の西側に横たわるとてつもなく広大な「グレートベースン」と名付けられた沙漠にあり、ショショーニの人たちはユタ州とネバダ州にまたがるハイ・デザートであるそこを「ニューウィ・ソゴビア(Newe Sogobia)」と呼んできた。「人びとの母なる大地」という意味である。
このとてつもなく美しくてかけがえのない沙漠の近くにあって、ウエスタン・ショショーニと同族であるゴシュート・ショショーニ(Goshutes)の人たちが先祖代々守り続けてきた「骸骨渓谷(スカル・バレー)」というところに、近年合衆国政府が高レベル核廃棄物処理場(核のゴミ捨て場)を作ろうと画策し続けている。そして2005年の1月には正式な許可証が発行されようとしている。世界中どこでも、日本においても、核廃棄物処理場だけでなく、核関連の大規模施設は、そうした弱い人たちの土地に飴とむち政策でいつでも狙いをつける。当然ながらショショーニの人たちも巻き込んだ反対運動が今も継続中だ。
*ゴシュート(Goshutes)最盛期には2万人を数えたが、現在は500人が残るのみ。そのうちの125人が、ゴシュート・インディアンのスカル・バレー一族としてユタ州のスカル・バレーというところの73平方キロメートルの土地で暮らしている。傀儡(かいらい)政府である部族会議のチーフが自分たちの土地を核廃棄物の貯蔵庫に提供すると決めてしまったために大きな騒動が起きた。
そこで来週の10月1日には今アメリカで注目されている——20世紀最後の、そして21世紀最強のアトランタ出身の女性フォーク・ロック・デュオであり、グラミー賞も受賞している「インディゴ・ガールス(Indigo Girls)」が、ユタのソルトレイク市にあるユタ州立大学のキングズベリー・ホールで、スカル・バレーの核廃棄場建設を止める目的の地球のためのコンサートを予定している。
インディゴ・ガールス(Indigo Girls)」は最近政治的に腰砕けのミュージシャンが多い中では自分たちの信念に基づいて活動する珍しい存在だ。1999年の女性による女性のための「リリス・フェアー(Lilith Fair 1999 A Celebration of Women in Love)」コンサート・ツアーでも中心的な役回りを与えられていたし、ドキュメントを見るとかっこよかったよね。日本では歌のうまさだけで紹介されているが、デビュー以来15年以上も行動と歌とが一致している最近では珍しい音楽活動家たちなのだ。彼女たちの公式サイトを見てみるとそれがわかるだろう。彼女たちはまた「地球を讃えよう(Honor the Earth)」という環境保護組織をネイティブの活動家であるウィノア・ラデューク(Winona LaDuke)とともに1993年に創設し、これまでに世界各地で70回近くの資金集めのためのコンサートを行い全米100を超えるネイティブの草の根運動にこれまで1,000,000ドルを超える資金を提供してきたし、また「再生可能なエネルギー計画」としてラコタのパイン・リッジ居留地やネバダのウエスタン・ショショーニの土地で風力発電施設を稼働させている。
10月1日のコンサートは、ゴシュート・ショショーニの文化と居留地住民たちの健康問題を憂慮し続ける草の根運動家たちおよびショショーニの土地に核廃棄物処理場を持ってくることに7年間反対してきた環境と文化を守るための団体の資金集めとして行われる。
インディゴ・ガールズの一人エミリー・サリアーズは「産軍複合体がまわしている輪にそろそろ大きな棒をつっこんで止める時なんじゃないの。誰も自分の家の裏庭に核廃棄物処理場なんてほしくはないわよね、そうでしょう? 死を売り物にする核産業を放棄して、風力とか太陽熱といった、もうひとつのエネルギー資源に向かって舵を切らなくてはいけないときが来ているのよ。新しいエネルギーのパラダイムは可能なの。人としての威厳を保ち、私たちが生き残り、未来の世代が生き残るためにもね。だからこの動きに参加してほしいわけ」と言っている。久しくこれほどの発言をするミュージシャンに出会えなかったので彼女の発言は何か新鮮ですね。日本の芸能界にいる人たちは逆さまになっても口にできないお言葉ではあります。
「それはわれわれの裏庭であり、前庭でもある。核による汚染は、あらゆるすべてのいのちを短くしてしまう。われわれはひとりの人間としてひとつにつながり、もうたくさんだと声をあげなくてはならない。われわれは、人間として、われわれの思いをひとつにして、このわれわれの星をともに守らなくてはならない。われわれにあたえられているのは、ひとつの水であり、ひとつの空気であり、ひとつの母なる地球なのだから」
——ウエスタン・ショショーニの精神的指導者でメディスンマンのコービン・ハーニィの言葉
※写真は「地球を讃えよう」を象徴する旗の前にたたずむインディゴ・ガールズ(エミリー・サリアーズとエイミー・レイ)のふたり。
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