クマのしっぽはなぜみじかいか (小話)
ディネ(ナバホ)族につたわるおはなし
再話 北山耕平
これは ちきゅうが わかかったころの おはなしです。
キツネが かわで さかなを つっていました。
つりあげた さかなが 10ぴきに なると キツネは さかなを まとめて せなかに せおい もりの みちを いえに むかって あるきだしました。
てくてくてく。
しばらくすると むこうから クマが やってきて キツネが せなかに せおっている さかなを めざとく みつけて きいてきました。
「そんなに たくさんの さかなを どうしたんだい? どうすれば そんなに たくさんの さかなを つかまえられるのかね?」
キツネは こたえました。
「かんたんさ。かわの こおりの はっている ところにいって そこに すわって しっぽを みずのなかに いれておけば いいんだ。さかなたちの ほうから その しっぽに かってに とびのってくるから いっぱい たまったら おとさないように たちあがるだけでいい。ね、かんたんな ものだろ。」
「ありがとうよ。」
と いうがはやいか もう クマは かわに むかって いちもくさんに はしり はじめて いました。
キツネが 10ぴきの さかなを せなかに せおって もりの みちを ひとりで げらげら わらいながら あるきさったことなど クマは しりようはずも ありません。
クマは こおりの うえに こしを おろしました。ながいこと じいっと すわったまま いつまでも いつまでも さかなが とびのってくるのを まって いました。
でも いつまで たっても さかなは しっぽのうえに とびのってきては くれません。
あるとき クマは じぶんの しっぽが かちんかちんに こおっていることに きがつき ました。
いやはや いたいの いたくないのって。
それから また さらに ながいあいだ がまんをしたまま まちました。
クマは ひとりごとを いいます。
「おやや。どうしたのだろう? しっぽが なにもかんじないぞ。」
しんぱいになって たちあがり クマが じぶんの しっぽに めをやると----なにも かんじない はずです----そこに あったはずの ながく りっぱな しっぽが こおって おちて しまっている ではありませんか!
のこされた しっぽは とても みじかく なって いました。
クマは おこりました。
さかなを つかまえるのを あきらめて そのかわりに さっきの キツネを とっちめてやろうと もりのみちを どどどどどと はしりだします。
そのころ キツネは はなうたまじりで さっきつった 10ぴきの さかなを いそがしそうに りょうりして いました。
いきなり クマに むんずと つかまって しまいます。
クマが いいました。
「さあ つかまえたぞ。よくも だましてくれたな。どうしてくれる あの おれさまの きれいで ながいしっぽが なくなって しまったではないか。こうなったら おまえを あのかわまで つれていき これから こおりづけに してやる。がるるるる。」
「ご ごかんべんを」キツネは ふるえあがりました。「そんなことは しないで どうか はなして ください。わたしの りょうりしたさかなを ぜんぶ ごちそうしますから」
ごちそう? クマは そのことばを きくと キツネをつかまえていた てをはなし こおりのように つめたくなっている みじかいしっぽを キツネのたきびで あたためながら ひとりで さかなの りょうりを ぜんぶ ぺろりと たいらげて しまいました。
まあ というようなことが おおむかしに ほんとうに あったのですね。
だから いまでは クマさんのしっぽは どれも みじかく なって しまって いるのです。
「Storytelling Stone」カテゴリの記事
- ストーリーテリング・ストーンと教え(2011.01.29)
- ジャンピング・マウスの物語(全文)(2010.01.01)
- サーモン・ボーイ(鮭だった少年)の教え(2009.10.30)
The comments to this entry are closed.
Comments