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Thursday, August 05, 2004

カメの背中のうえの大地 (物語)

オノンダガ族につたわるおはなし

再話 北山耕平

※オノンダガ族 アメリカ大陸の東部森林地帯の北部をテリトリーにする部族で、モホーク、オネイダ、カユガ、セネカ、タスカローラなどの同じように長い家に暮らす人たちとイロコイ連合(長い家に暮らす人たちの連合)を構成していた。オノンダガ族というのは、自らを呼ぶときに使うもので、「丘に暮らす人びと」の意味。


むかし むかしの そのまた むかし、ちきゅうが うまれて まだまもないころの これは おはなしです。

せかいはいちめんの みずにおおわれて いました。

どっちを みても、みず みず みず。

どこまでも みずがつづいて います。

とりたちも どうぶつたちもみんな みずの なかをおよぎまわって いました。

その ころ、たかい そらのくもの なかにはそらの くにがあった そうです。そらの くにには、おおきくてそれは それは うつくしいきが いっぽんありました。そのきは ねっこの さきが よっつに わかれ、それぞれがひがしと にしと きたと みなみにのびていて、えだにはいろいろな くだものがやまの ように なり、たくさんの はなが さいていました。


そらのくにの チーフには、おなかに あかちゃんのいるまだわかい おくさんが ありました。

この おくさんが あるばんとても こわい ゆめを みたのです。

「あの うつくしい きが、ねもとからそっくり たおれて いました。」

つぎの あさ おくさんは チーフに ゆめの はなしを きかせました。

「つまよ。なんと かなしい ことか。その ゆめは たいへんにちからのある ゆめだからだ。だれかが たいへんに ちからがあるゆめを みた ときには、みんなで ちからを あわせて、そのゆめを じつげんさせなければ ならない。そうしないと かならず わるいことが おきるのだ。」


チーフは かなしそうな かおで そういうと、さっそく いちぞくのわかものを よびあつめ、その うつくしい きを ねもとから ひきぬくよう めいれいしました。でも うつくしい きは とてもふとくて おおきな きです。わかものたちが いくらちからを あわせても なかなか ぬけません。

「どれ、わたしが やってみよう。」

チーフは ふといみきに りょうてをまわして ひざを まげ、えいやっと ぜんしんの ちからを こめました。

ずずずずずずずず、ずぼっ!

いきなり うつくしい きが ぬけました。


あとには おおきくて ふかいあなが ひとつ。

おくさんが おそるおそる そのあなにちかづいて、たおされた きのえだの さきにつかまり みを のりだすようにして、したを のぞきこみました。

「きらきらと ひかって いてとても きれい」

もっと よく みようと、おくさんが おもわず みをのりだした そのときのことです。

あしが ずるっと すべりました。

おくさんは つかんでいた きのえだをにぎりしめたまま、まっさかさま。

うわーっ、おちる、おちる! おちるーっ!


はるか したの みずの なかでは、とりたちや どうぶつたちがそらを みあげて いました。

「おーい。そらから だれかが こっちへふって くるぞー!」

さけぶこえが きこえました。べつの こえが つづきます。

「なんとか たすけて やれないものかねえ!」

そのとき 2わの はくちょうがとびたちました。はくちょうたちは はねをおおきく ひろげて、そらからおちてくる おくさんを うけとめ、そのまま ゆっくりとすいめんまで おろして きました。


しんぱいそうに みつめていたとりたちや どうぶつたちが、あつまって きました。

「おい みろよ。ぼくたちに ちっともにて いないや。」

「あら いやだ。あしには みずかきもないのねえ。これでは みずのなかで いきて いけないわよ。」

「いつまでも はくちょうさんのはねの なかに いるわけにもいかないし ねえ。」

「こまったなあ。」


みんなが くびを ひねって あれやこれや かんがえて いると、カモの おばあさんが いいました。

「きいた はなしでは、このみずの ずーっと ずーっと したの ところに、だいち というものが あるらしい。だれか もぐって いって、その だいちを ここまでひきあげて くれば いいのじゃがな。」

とりたちや どうぶつたちはあつまって そうだんを はじめました。


「まず わたしが いって みます。」

さいしょに もぐったのは アヒルです。どんどんと ふかい ところまで もぐっていったのですが、だいちには てが とどきません。いきが くるしくなってあきらめて うかびあがって きました。

「つぎは ぼくの ばんだ。」

こんどは ビーバーが ちょうせんです。アヒルよりも もっと ふかいところまで もぐりました。まわりが だんだん くらく なってきました。でも だいち なんて みえません。ビーバーも あきらめました。


「わたしなら もうすこし ふかいところまで いけるかも しれないわ。」

3ばんめに てを あげたのはつよい はねを もったみずとりの アビでした。アビは ちからづよく みずをかいて、ぐんぐん すすみます。いままでだれも いった ことが ないふかいところまで もぐりました。あたりは まっくら。でも だいちには てが とどきません。アビも なにも もたずにあがって きました。

そうやってとりたちや どうぶつたちのぜんいんが ちょうせんし、けっきょくは みんなしっぱいして しまったのです。


「こまったなあ。」

「どうすればいいのかしら?」

みんなは あたまを かかえました。

その ときです。

「ぼくが だいちを もちあげて きます。」

ちいさい こえですが はっきりとみんなに きこえました。

ネズミのなかまの マスクラットが うしろのほうから まえに すすみ でて きました。マスクラットは ネズミの なかまで、ビーバーにも そっくりで およぎもとてもじょうずです。でも とても ちいさくて、だいちを もちあげて くる なんて、だれにも しんじられません。

「いっしょうけんめい やって みます。」

マスクラットは みをひるがえし、ざんぶと もぐると、すごい いきおいで みずを かきはじめました。


マスクラットは ほかの とりたちやどうぶつたちに くらべて とりたてて ちからがつよいわけでも、およぎが うまいわけでも ありません。

「やる と きめた ことなんだからなにが あっても やりとげよう。」

ふかく ふかく もぐるに つれて あたりは どんどんん くらく なっていきます。それでも マスクラットはおよぎを やめません。ついに、あたりは まっくらに なってしまいました。


「いきが くるしい。なにもみえない。だいちは まだか」

むねが ばくはつ しそうでしたが、マスクラットは およぎ つづけます。

きが とおく なりかけた そのとき なにかに てが ふれたようなきが しました。

でも がんばりも そこまででした。きを うしなって しまったのです。

マスクラットは しんだようになって うきあがって いきました。


マスクラットの からだが すいめんにうかび あがったとき みんなは てっきりマスクラットがしんでしまっのだと おもいこんで かなしみました。

しかし そのときの ことです。

「おい マスクラットが うごかなかったか!」

「それに みろよ。みぎの てになにか にぎっているぞ。」

いっせいに さけびごえが あがりました。

「だいちだ。マスクラットが だいちをつかんできたんだ!」


マスクラットが きがつきました。

「でも せっかくの だいちをいったい どこに おけば いいのだろう?」

「わしの せなかに おくといい」

しずかな こえのぬしは カメでした。それも とても おおきな カメです。うみの ずーっと ふかいところからいま あがって きた ばかり でした。

みんなは ちからを あわせてぐったりと した マスクラットのからだを カメのせなかに おしあげ、しっかり にぎりしめた マスクラットの てを そのこうらに おしあてました。

いまでも カメの こうらにはこのときの マスクラットの ての あとがはっきりと のこって います。


カメの せなかに おとされただいちの かけらは、あれよ あれよ という まにおおきくなりました。

「どうぞ この だいちの うえに おあがり ください。」

2わの はくちょうが そらからおちてきたおくさんを やさしく だいちに おろしました。

おくさんは あたらしく うまれたばかりの だいちの うえに たち、にぎりしめていた てを ひらいて そらのくにから はこんで きたあの きの たねを まきました。


たねは やがて くさや きと なり、はなを さかせ、みが なって、だいちは いのちを はぐくむところと なりました。

そしておくさんから うまれたあかちゃんが にんげんとなり、とりや どうぶつや きや くさや はなたちと なかよく くらしました。

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