ハイビスカスという名の台風
タイの言葉で「ハイビスカス」を意味する「Chaba チャバ」という可憐な名前をもらった台風16号、デジタル台風で見ると、目が消えかけていてその左巻きの渦の勢いはピークを過ぎたようですが、それでも今年一番大きな台風のまま、九州を狙っていますね。進路にあたるところに暮らす人たちは、これから数日は、気を休めることができないでしょう。
ネイティブの人たちは、台風(アメリカだとハリケーンね)や洪水や地震や竜巻や雷などの自然現象を、グレイトスピリットからのメッセージだと受けとめます。グッド・メディスンかバッド・メディスンかはわかりません。バッドのなかにもグッドがあり、グッドのなかにもバッドがあるのが自然だからです。とくにシャーマンであるメディスンマンやメディスンウーマンの人たちには、自然界のなかにある動物や植物だけでなく、母なる地球の御働きの現れであるそうした自然現象に特別に近しいものを感じるようで、その結果、彼らは自然の発する言葉や自然の掟のようなものを理解しています。彼等は象徴的なものと現実が混ざりあった世界で自然とコミュニケーションをとって生きています。だからそうした自然現象も、いわゆる科学的な分析などとは次元の異なる理解の仕方をするのが普通です。自然界にあるあらゆるものが知と力の源であることを理解する方法を、残念ながら現代人のわれわれはあらかた失ってしまいました。
かつて熱海の上多賀というところでみかん畑のなかの一軒家を借りて暮らしていた頃、わたしは物好きにも台風が伊豆半島を狙っている時などに、わざわざその通路の真下を目指して横殴りの雨のなか車を走らせたこともありました。あまりおすすめできるようなことではありませんが。でもいつだったか天城山のなか、河津温泉大滝の近くで台風が頭上を通過していくところを体験したことがあります。川はとてつもない水の量で、人間の腕ほどもある木々の枝などが次々と滝の上流から流されてきました。三時間ほどして台風が通過した後は、嘘のように世界が一変し、山も森も光に満たされましたが、そのときの大滝は、ものすごい水量で、頭の中が滝の音で溢れかえるほどであり、後にも先にもあれほどの勢いでゴーゴーと水の流れ落ちる光景を見たことがありません。ただただこちらは口を開けたまま、いろんなものをのみ込んで流れていくいつもとは表情の違う川の水面をいつまでも見ておりました。
なお台風17号(アメリカ名前でAERE・アイレー・嵐)は、ハイビスカス台風の力が大きすぎて押し出されて、台湾島を北から巻き込むようにして、すでに中国大陸の福建(ふっけん)省・福清(ふくせい)市に上陸し、熱帯低気圧に変わったものの今後は進路を西に取り、広東(かんとん)省を直撃する模様。台湾ではすでに20人以上が亡くなりました。台風がこんな動きをするのは珍しいと、広東省気象台が伝えています。珍しいことが起こっているのです。
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