自然の裁き
今月にはいってすぐアリゾナ州にあるグレアム山(Mount Graham)の山頂付近で山火事が発生し、火の手が山頂にある合衆国の大型望遠鏡施設に迫っているという。
グレアム山はもともとネイティブ・ピープルからは「鹿の多い山」と呼ばれていた。この山を昔から聖なる山として信仰してきたサン・カルロス・アパッチの部族のひとりはその火災を「当然の報いだ」と話した。「メディスン・ピープルは必ずお山に良くないことが起きるにちがいないと語っていた」そう言うのはアパッチ生存同盟の会長のマイケル・デービス氏である。デービス氏は十数年前にグレアム山の山頂に天体望遠鏡と観測施設が設置されたときにアパッチ生存同盟を結成した人物だ。
アパッチの信仰においては、すべての山の頂は「聖なるもの」とされている。「お山は、大昔からいのちの源の力だったのだ」とデービス氏。「グレアム山には長いあいだ人間が登ることはなかった。その聖なる山の頂や木々や動物たちをあの連中が破壊しはじめるまでは、ほとんど処女峰だったといっていい。なにより大切なのは、あそこが聖地だってことだ。非インディアンには理解できないことだろうが、聖地が破壊されると、深刻な影響がもたらされるだろう」
デービス氏によれば、メディスン・ピープルも長老たちも、お山の自然破壊によってもたらされる「良くないこと」の中身については特定はしていない。だが、彼によればそれは「お山そのものの、母なる自然そのものの逆襲となる」ということである。
サン・カルロス・アパッチの隣の部族であるホワイト・マウンテン・アパッチの前部族会議議長であるロニー・ループも、「われわれアパッチはひとり残らず聖なる土地がどうなるかを心配している」とこの件に重大な関心を表明した。「自然はわれわれひとりひとりにそれなりのやり方で語りかけてくるものだ。今回の火事は聖なる土地に望遠鏡のようなものを設置したわれわれへの創造主からの答えなのかもしれない。自然の裁きにゆだねるしかない」
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