スリー・シスターズ #05
「スリー・シスターズ #04」で紹介したニューヨーク州立博物館バーチャル・イロコイ展示館のジオラマをご覧になりましたか? その時代に生きていたわけではないので確証はないのですが、雰囲気はよく出ていると思います。右側にずっとスクロールしていくと木の台があって上に子どもがいますが、これは畑の監視台です。たいてい子どもがその台のうえにはのぼらされて、歌を唄うことになっているのです。そうやって自分の存在を歌で教えることで、カラスや、カササギや他の作物を狙ってくる動物たちを追い払うのが仕事なのです。同時に、そこで子どもが唄う歌が作物をより元気に成長させてくれるのだと、ネイティブ・ピープルは信じていました。
作物を「お金・マネー」として見る現代の農家は、ほとんどが単一作物の栽培です。広い土地でただひとつの種類の作物を育てるもので、英語では「monoculture(モノカルチャー/単作・単一栽培)」といわれています。反対に作物を「いのちをつなぐもの」として見、スリー・シスターズ・ガーデンのようにいくつかの作物を組み合わせて栽培する伝統的な農のことを「polyculture(ポリカルチャー/複作・混作・多品目栽培)」といいます。農業が工業化した社会では、モノカルチャーが主流なのですが、食と農にたいする意識が住民レベルで高まるにつれて、もう一度ポリカルチャーである少量多品目栽培を見直そうという動きが出てきているのは興味深いことではあります。
伝統的なアメリカ・インディアンの農においては、どんな作物でも多少多めに栽培するのが普通でした。多く作った分は、畑に侵入してくる昆虫や鳥たちや動物たちの分と考えられていたからです。カラスやアライグマなどの普通より賢い鳥たちや動物たちのためには、畑の作物から少し離れた場所に欠けたトウモロコシや他の植物の種などをこんもりと盛り上げたものを作って、そちらにやってきて食べるように誘導していたりしました。北米南西部に暮らすズニの人たちなど多くの農耕定住の民は「案山子(カカシ)」をつくったといわれています。部族によっては、収穫月が近くなると畑の近くに小さな仮小屋を設置して、おばあをふくむ女性たちがかわるがわるそこにつめて、みなで歌を唄ったりして畑への侵入者を追い払うところもありました。もちろんその歌は、作物の成長を応援するための歌でもあるのですが。
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