Save the ASAGIRI Medicine Wheel
願わくはそれらの石たちがこれからも末長くその場所にとどまりつづけることを私は乞い願う者である。儀式は伝説となり、日本列島のうえを吹き渡る風に拭かれるまま人の口から口へと伝わり、やがて儀式に参加した人たちが、儀式に参加できなかった人たちが、自然と世界の調和を願う人たちが、これからその場所を折りにふれてたずねるようになるかもしれないからである。ネイテイブの文化に、縄文時代の人の----地球に生きるひとりの人間としての----生き方に興味や関心を持っている人は、さら地に還されてしまう可能性も無きにしもあらずのため、その場所はすぐにでもたずねてみる価値があるだろう。それは心の内側を静かにのぞきこむための装置でもある。そこから帰る時にはロードサイドにある観光客を対象とする観光牧場がすっかり色あせてみえるはずだ。メディスン・ホイールのかたわらに一人で坐って、満天の星を見つめて見たいものではないか。きっと自然の鏡のようにそこは訪れる人の心のありさまを写し出すことだろう。現在の富士山にはそうした場所が(人間のおろかな行為を写し出してくれるための場所が)必要である。その場所を欲に駆られて商売に利用しようとする人は、2004年の夏至の日にそこに祈りをこめた数千人の良きハートのスピリットの力によって、かならずや打ちのめされることであろう。
富士の懐ふかくから集められ、中心から大きな円を描くような同心円状に配石された石組みの、儀礼のための場所。ストーンサークルとかいろいろな呼び名がされるけれど、それが「メディスン・ホィール」である。この大地に描かれた大きな輪が「メディスン・ホィール」と命名された直接のきっかけは、アメリカのワイオミング州のビッグ・ホーン連峰のなかのメディスン・マウンテンと呼ばれる特別な山の山麓の平原で発見された200年ほど前のネイテイブ・アメリカンの祭儀場の遺構がきっかけだった。それは1969年には合衆国の特別指定遺構にも認定され、今でもその遺構は大切に保存されている。またサウスダコタ、モンタナ、カナダのアルバータ地方には、紀元前2500年ぐらいからの150ほどののメディスン・ホィールの遺構が発見されているが、メディスン・ホィールそれ自体にはおよそ7000年ぐらいの長い歴史があることがわかってきていて、学問的な研究も宗教学のみならず天文学、建築学などの領域で研究もすすんでいる。
あきらかにそれは前の世界から今の世界に伝えられた星の知恵を伝える装置であるし、またメディスン・ホィールはそのまま北アメリカ大陸のネイティブ・ピープルの信仰と宗教の一部であるサンダンスのためのロッジを象徴しているといわれている。それはあきらかに特別な星の知識に基づいてつくられており、先史時代の人たちがどのようにして空を見たのかを今に教えてくれてもいる。シャイアンの長老が「そこは祈りのための場所であり、そこに鎮められている大地の強力なスピリットと個人のスピリチュアルな調和をとるためのもの」と語っているが、であるからこそその配石遺構は大切に取り扱われなくてはならないものである。大地と自然と宇宙の調和を保つ意味でも、そこに置かれている石を動かしたりしてはならないのである。石は、この地球に生きているもっとも古い人なのであるから。
(註1●わたしはこの文章によってWPPD JPAN 2004 の事務局の人たちを困らせようとする意図はまったくない。彼らには感謝こそすれ、無理難題を押しつけるような対象ではないからである。あくまでも個人的な、ささやかな希望を述べさせてもらっているのである。静岡県や、富士宮市に、そうした心のわかる人たちが何人かいてくれることを願うばかりであります。)
(註2○結局朝霧アリーナにつくられたメディスン・ホイールは、ネイテイブの関係者によって結界が解かれたあと、それぞれの石はもとあった場所に戻されました。六日間だけのメディスン・ホイールは、それぞれの人たちの心のなかにのみ残されたことになります。あれが夢でなかったかどうかを計るためのものさしはそれぞれの頭と心のなかにだけ残されました。その場に居合わせたわたしたちひとりひとりは、その心のなかのメディスン・ホイールのまわりを、はじまりも終りもないサークルのまわりを、旅していくことになります。記憶を共有しましょう! Text updated 29/06/2004)
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