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Wednesday, June 09, 2004

もうひとつの「ひとが死ぬ理由」

ここ『ネイティブ・ハート』の「Storytelling Stone」というカテゴリ・ファイルのなかに「ひとが死ぬ理由」というブラックフットに伝わる物語がおさめられています。死がどのようにして人間の世界にもたらされたのかを子供たちに伝えるためのお話ですが、この「ひとが死ぬ理由」の物語とほとんどかわらないお話が、ウエスタン・ショショーニの人たちのあいだにも残されています。ブラックフットの人たちのあいだに残された物語では、一組の夫婦の神さまのお話でしたが、ウエスタン・ショショーニでは灰色狼(グレイ・ウルフ)とコヨーテの話になっています。ブラックフットは平原インディアンの部族のひとつですが、現在のモンタナ州からカナダ南部をテリトリーとしていて、ショショーニはネバダ、コロラド、アイダホがテリトリーで、両者のあいだにまったく交流がなかったわけではないのですが、実によく似ているので、どうか読み比べてみてください。

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むかしむかし、灰色オオカミとコヨーテがつるんで歩いていました。その頃はまだ死というものがどこにもなかった時代です。だれ一人として死ぬようなことはありませんでした。しかし、オオカミもコヨーテもいずれは死というものがこの世界には必要なことがわかっていたのです。

ふたりはあるとき鮭のとれる川までやってきました。

「あ、そうそう。この世界にふさわしい死というものをそろそろきめておかなくてはならないんじゃないか?」と灰色オオカミが口を開きました。

「そうさなー、じゃこうするべえよ?」コヨーテがこたえました。「あんたがよ、まずはそれについて話してくれ。そしたらつぎにこのおれが、話させてもらうからよ」

灰色オオカミは落ちていた木の枝をひろいあげました。

「そうよな、人間が死んだときはこうするってのはどうだろうか」灰色オオカミは言いました。「この木の枝をおれが川の中に投げ込むだろ。もしこの木の枝が浮いてきたら、人間は死んでも四日ほどしたらまた生まれかわってくるんだ」

灰色オオカミは持っていた木の枝を川の中に投げ込みました。木の枝はすぐに浮かびあがってきました。

「すっげー!」灰色オオカミがうれしそうに言いました。でもコヨーテはなかなか口を開きません。つぎに話すのはコヨーテの番です。

コヨーテは道のうえに落ちていた石をひとつ手に取りました。

「ひとの死ってやつはよ、こうじゃなくちゃなるめえ」コヨーテが口を開きました。「おいらがこいつを川の中に投げ込むぞ。もしこいつが浮かんできたら、おまえさんが言ったような死にしよう。だがな、もしそのまま沈んじまうようなことだってあるだろ? そんなときは、人間は二度と、いいか、二度とこの世界に生まれてくるようなことはもうなくなっちまうのさ」

そう言うとコヨーテはその石を川の中に投げ込んだのです。

ボチャン!

石は二度と浮かんではきませんでした。

コヨーテの方があとから口を開いたので、こういう理由で今のこの世界に死がもたらされました。人間は一度死ぬと二度と生き返ることもないのです。

「世の中の仕組みってのは、こうでなきゃな」コヨーテが言いました。「もしもだよ、死んじまった人間たちが生き返るようになっていたら、この世界もすぐに人であふれかえっちまうだろうが」

それからしばらくして、ある日のことでした。

コヨーテの身を不幸がおそいました。最愛の奥さんが死んでしまったのです。

妻を失うとすぐにコヨーテはそれまでの考え方を改めました。やっぱり死んだ人間がずっと生き返らないなんて、いいわけがないじゃないか。

そこでコヨーテは、死者のスピリットたちが集まっている場所まではるばる出かけていきました。長い長い旅でした。ようやくその場所にたどりつくと、そこでは死者たちが大歓迎をしてコヨーテを迎えてくれました。コヨーテの死んだ奥さんも涙を流して喜んでいます。

「あなた! よくきてくれたわね。絶対にここまではきっこないって、思っていたのよ」コヨーテの妻が夫にむかって言いました。

「お、おいら、どうしても、来たかったんだい」と、コヨーテ。

コヨーテはそれから、自分の妻のスピリットをバスケットのなかに押しこんで、それを抱えてもときた世界に戻るために歩きはじめました。

一度もバスケットを開けることなくコヨーテがもとの世界まで戻れたなら、彼女のいのちも生き返ることになっているのです。最初の数日間は、何事もなく無事に過ぎてゆきました。しかし、死者の国から今の世界まではおそろしく長い旅路なのです。いいかげん来たところでコヨーテは不安になってきました。彼女のスピリットは無事だろうか?

「ちょっくらのぞいたからって、傷つけるようなことはあるめえよな? どれ、彼女が無事にやってるか確かめてみるとするか」

そう独り言をいいながら、コヨーテが用心深くバスケットのふたをほんの少しだけ開けたそのとたん、それだけで一瞬にしてバスケットは空になっていたのです。妻のスピリットはいずこかえと消え去っていました。コヨーテはがっくりです。そしてそのことがあって以来、だれひとりとして一度死んだ人間がもとの世界に生き返ってくることもなくなってしまいましたとさ。

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