« 体と地球 | Main | コヨーテおじさんとぼく »

Saturday, May 29, 2004

火を盗んだコヨーテ (物語)

ラコタ族につたわるおはなし

むかし、ちきゅうが わかかったころ、まだ、さむい きせつは、ありませんでした。はるがきて、なつがきて、また はるがきます。あきも、ふゆも、ありません。

ところがあるひ。あたたかいのがだいすきなコヨーテおじさんは、てんきがいつもとちがうことに きづきました。くうきが つめたく なって きて いたのです。どうぶつたちも、よるになるとさむさが みに しみて、あたたかい けがわに くるまってねむるように なりました。

「にんげんには けがわもない。なんて かわいそうに。どうやってさむさから みを まもるのだろう。」

コヨーテおじさんは、しんぱいになりました。こおりの ように つめたいふゆの あいだに、たくさんのにんげんが こごえて しんで しまうにちがいありません。

「なんとか してやれない ものか。そうだ。」

コヨーテおじさんのあたのまなかで、なにかが、ひらめき ました。

とおくの やまに、さんにんの ひのかみさまが すんで いる ことをおもいだしたのです。その かみさまたちは、たいようのかけらを たからものに して いました。

「あの かけらの ほんの すこし でもてに いれられれば にんげんたち だってながい ふゆを ティピの なかであったかく くらせるに ちがいない。」

コヨーテおじさんは、ひをぬすみだす ことに しました。

どこまでも あるいて、ひの かみさまたちが くらすやまの ふもとに、つきました。やまに のぼり、はやしの なかからかみさまたちの ようすを うかがいます。おとこの かみさまが ひとりと、おんなの かみさまが ふたり、あかあかと もえる ひを かこんで、はなしを していました。さんにんは きょうだい のようです。

そのとき コヨーテおじさんの あしもとではっぱが カサコソと おとを たてました。ものおとに きが ついた ひのかみさまたちが、いっせいにたちあがりました。あかく ひかる おそろしいめで、コヨーテおじさんの かくれて いるしげみの ほうを にらみつけました。

「なんだ、いまのおとは。」おとこの かみさまが、ひくいこえで いいます。

「どろぼうだわ。たいせつな ひをぬすみにきたのよ。」

おんなの かみさまの ひとりが さけびます。いもうとの かみさまが、しげみの そばまでやってきて、コヨーテおじさんを みつけ、おそろしい かおで にらみつけると、あたりを みまわして、いいました。

「だいじょうぶよ。ここに みすぼらしいコヨーテが いっぴき いる だけだもの。」

さんにんの ひの かみさまは、もとのところに もどると、それっきりコヨーテおじさんには めも くれませんでした。だから おじさんは、くさの うえにこしを おろして ひの かみさまたちのすることを みて いました。

ひの かみさまたちは、からからにかわいた まつぼっくりや かれくさを、ひに くべて います。もえさかる ひの なかから、ときどき、ちいさな ひが とびちる ことが あって、そういう ときには かみさまたちは、ひが にげて いかないように、あしでひを ふみつけて けしたり しました。

さんにんの ひの かみさまは、まるで たからものを まもるように、じゅんばんに みはりに たちます。すきが、ありません。しかし、そのうちあさの はやいとき には、ほんの いっしゅん、みはりがいなくなる ことに、きがつきました。

よるの あける すこし まえ、つめたい かぜが ふきこむ ころ、それまで みはりばんを して いたかみさまが こうたいの かみさまをおこす ために、いっしゅんだけひの そばを はなれるのです。

「さ、さ、おきた、おきた。みはりを かわって おくれ。こんどは、わたしが ねむる ばんだ。」

コヨーテおじさんは、はやしのところまで はうように してもどると、あたりの きたちにじぶんの けいかくを つげて、ちからを かして くれるように たのみました。き というのは ねをはやした ひとです。その ひと たちは、おじさんのはなしを きいて、みんなきょうりょく すると、やくそく して くれました。

つぎのあさ、みはりをしていた おとこのひのかみさまが、いもうとたちを おこしにいくときを コヨーテおじさんは まちかまえました。

「おい、そろそろ おきるじかんだぞ。けさは ことのほか さむい。はやく ひのみはりを かわってくれ!」

「はい、はい、いまいくって いってるじゃないのよ」とこえがしました。

コヨーテおじさんは、そのしゅんかんをねらって かみさまのねぐらに おどりこむと、もえさかるひを わしづかみに つかみ、それっとばかり やまをかけくだりました。

にげろや、にげろ。

ひのかみさまたちは、いっせいにたちあがり、おおきなこえをあげて あとをおいかけます。

「ひー、たすけてくれーっ。」

あやうく つかまりそうになって、コヨーテおじさんは、もっていたひを ほおりだして にげました。かみさまのてが しっぽに かすかにふれたのですが、おじさんは にげきりました。でも かみさまのてがふれた おじさんのしっぽのさきは、すっかり いろがおちてしまいました。コヨーテの しっぽのさきは それいらいずっと しろいままです。

コヨーテおじさんの なげすてたひを つぎに つかまえて せなかにせおって にげたのは リスでした。

「おいらの でばんだ。」

リスは、もえさかるたからものを せなかにのせて、ちかくにはえていたきの、いちばんたかいところまで、ひといきに かけあがりました。たいそうゆうかんな リスではありませんか。せなかでは ひがもえていて、リスさんのせなかを、ひどくこがしていたのです。このとき せなかに ひをせおったせいで、リスのしっぽは まるくそりかえって、くろくなってしまったのです。ところが ひのかみさまたちが おいついてきたので、こんどはリスは、そのひを じめんにいたべつのリス、のちにシマリスとよばれるようになる ちいさなリスめがけて、ほうりなげました。

「おーい、たのんだぞ。」

「まかせておけって。」

その ちいさなリスは、すばしこく はしりまわることが できます。ひをもったまま けんめいに はしりましたが、でも、いつも おなじところを ぐるぐる まわっているだけ。やがて ひのかみさまたちに おいつかれて しまいました。かみさまの のばしたての さきの つめが、ちいさな リスの せなかを ひっかきました。この ひっかききずのせいで のちにシマリスとよばれるようになる リスのせなかには、しましまが くっきりと のこされているのです。

シマリスは、こんどは ちかくにいたカエルに むかって ひを ほうりなげましたが、うんわるくカエルは ひをつかんだまま むんずと ひのかみさまに しっぽをつかみあげられてしまいました。

「さあ、どうだ、つかまえたぞ。」

「いのちばかりは、おたすけを。」

ひのかみさまたちが かえるを つぶそうとした とき、いきなりスポンと かえるのしっぽが ぬけおちました。こどものときには しっぽがあるのに、おとなのかえるたちに しっぽがなくなったのは、そのときからです。カエルはつぎに ひを はやしに なげつけました。はやしの なかでは きが、まちかまえていました。

くちをあけて きが ひを のみこんだとき、ひのかみさまたちは おおきなひめいを あげました。

「かえせ。だいじな たからの ひを かえしてくれーっ。」

かみさまたちは おおごえで ひを もどすよう きにたのみながら、みきに たいあたりをしたり、ナイフで きりかかったり しましたが、きは、けしてひを かえそうとはしません。やがて、ひのかみさまたちもあきらめ、しかたなく ぶつぶつともんくをいい、なきごとをこぼしながら、ねぐらのある やまに もどっていきました。ひは はやしの きのなかに とじこめられてしまったのです。どうすればこのひを とりだせるでしょうか?

かみさまたちにも とりかえせなかった ひを、きからとりだすほうほうを しっていたのは、あのコヨーテおじさんでした。コヨーテは、とてもかしこいのです。コヨーテおじさんは、にほんの かわいた きのえだを こすりあわせることで、そのなかから ひが とりだせることを、にんげんに おしえました。

にんげんは きのなかにとじこめられたひを とりだすほうほうを そうやって コヨーテから まなんだおかげで、それからは もう さむいふゆのおとずれを しんぱいすることも なくなりましたとさ。

|

« 体と地球 | Main | コヨーテおじさんとぼく »

Storytelling Stone」カテゴリの記事

Comments

コヨーテおじさんも、根の生えた人も頭良いなあ。4本足の人たちも、人間のことを気にかけていてくれるのですね。これで、コヨーテの子孫たちは、人間の火を見ると、安心して遠ざかるのかしら。これは、コヨーテから聞いた話ですか?

Posted by: j-tenten | Saturday, May 29, 2004 at 12:00 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/25341/668830

Listed below are links to weblogs that reference 火を盗んだコヨーテ (物語):

» 火を盗んだコヨーテ (クラマス族) [サンタフェより]
その昔、人々は火を自由に使うことができなかった。冬になっても、暖をとることができなかったし、食べ物は生のまま食べた。火は雷が守っている大きな白い岩の中に、閉じ込められていた。雷はとても恐ろしく、誰もが怖がっていた。熊やクーガーでさえも、雷がゴロゴロいうと身を震わせた。 コヨーテは雷を恐れていなかった。実際、彼には何も怖いものがなかった。ある日、雷の機嫌が悪く、鼻息荒くうなり声をあ�... [Read More]

Tracked on Monday, November 28, 2005 at 02:32 PM

« 体と地球 | Main | コヨーテおじさんとぼく »