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Thursday, April 15, 2004

地球の多様性を守る知恵

ものの本によれば世界にはざっと数えただけでもおよそ75000種類の植物が何らかの形で葉や根や茎や実などに食べられる部分を持っていて、世界で先住民と呼ばれているネイテイブ・ピープルが、そのなかのおよそ70000種を食料にしているのだそうです。わたしたちが日ごろなにげなく食べている野菜や果物のなかには、6000年から7000年前に、南米のインカや、中米のマヤ、アズテク(アステカ)の人たちがもともと育てていたものが結構あったりします。

インカ、マヤ、アズテク(アステカ)の三つの文化は150種類以上の作物を栽培していたことが研究からわかっています。それらのなかでわたしたちがよく知っているものとしては「トウモロコシ」「カボチャの仲間のスカッシュ」「ピーナッツ」「ペッパー」「トマト」「ジャガイモ」などがあげられます。これらの種のひとつひとつが全部同じ種類かというと、けしてそうではなくて、本来の自然界における多様性の法則とでもいうのでしょうか、風土にあうようなかたちで何十、何百もの品種のトウモロコシやトマトやジャガイモなどが実際は存在しています。南北あわせたアメリカ大陸では、トウモロコシだけでも150種類以上が栽培されてきました。ネイティブ・ピープルの農にとって何よりも重要だったのがトウモロコシや豆やスカッシュやイモの多様性だったわけです。みんなが同じものを食べていたわけではないのですね。

こういう事実から考えてみるだけでも、一種類のトウモロコシしか知らないとか、一種類のきゅうりしか食べたことがないというのは、極めて不自然なことであるのがわかります。ちょうどここまで書いたところで、世界自然保護基金(WWF)の4月9日付けプレス発表(英文)の記事の要約がメールで配信されてきました。「効率の悪い農業活動は最大の環境破壊」というのが要約された記事のタイトルでしたが、原文にあたってみたらタイトルは「農業はいろいろある環境への脅威のなかでは最大のもの」でした。そこにはこうあります。「効率の悪い食料の生産と、百害あって一利なしの農業補助金が、森林破壊や水不足や環境汚染を引き起こしている」(同基金のプレス発表の書き出し部分)

ここで書かれている「効率の悪い食料生産としての農業」は、ぼくがこの間に述べてきた「ネイテイブ・ピープルの農」とは対極にあるもので、種類を限定した「単一作物」を大量に生産するために「肥料・農薬を多投し、高価な重機械を多用する」ような、今では近代国家においてはあたりまえのようになっている「農業」のことです。自然界の生物が持っている多様性に全く配慮することのない単一作物を大量に生産する農業は、とても効率がよいように政府や関係機関によって喧伝されてきてはいるものの、森林の破壊や大気や土壌や海洋の汚染、種の絶滅などの社会的なコストの総体からみれば、とてつもなく「効率の悪い農業」であるというのです。そして、化学物質と重機械を盛大に使う単一作物農業に政府が補助金をつけるとどうなるかの一例として、イギリスの例があげられています。イギリスではそうした政策の結果、過去30年で、野鳥の数が77パーセントも減少してしまったのだそうです。

たった30年で鳥たちの数を半分以下に減らしてしまうというのは、どう考えても異常なことですよね。そしてそれと同じことがぼくたちの国でも起きていないとはおそらく言い切れないのです。同じ記者発表のなかで、「中国と日本とアメリカとEU」という消費大国には特に名前をあげて警告が発せられています。農業が激しい競争に巻き込まれ、さらにそうした競争をあおるために補助金をつけるよりも、もっと環境に配慮した農業マネージメント・システムに切り替えることが重要ではないのかと。

もちろん、もう一度地球の先住民たちのやってきたような農業に復[かえ]れなどとぼくもいうつもりはありませんし、それで今ほどの人口が養えるとも思ってはいません。そうであってもなお、自然界の多様性という素晴らしい贈り物を保つためには、ものを食べて生きていくすべての人たちが「農」にたいする新しい意識を育てる必要があるでしょう。実際に自分の手でなにかひとつでもいいから作物を種から育てて(プランターでかまわない)それを最後には自分で食べてみることがとにもかくにもはじまりなのです。ネイテイブの人たちが守りつづけてきた彼らの地球のさわり方が、そのときはじめて智恵となって頭からハートに降りてくるのではないでしょうか。

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