コヨーテとウサギ(物語)
ラコタ一族につたわるお話
再話 北山耕平
いつものように キョロキョロしながら コヨーテおじさんが
あるいてきます。そうやっておじさんは なにかめずらしい
ものはないか、いつだって さがしているのです。
あるとき ウサギとでくわしました。ウサギさんは かわのお
おきなふくろを せなかに しょっています。
「やあ、ともだち」コヨーテおじさんが こえをかけました。
「ごきげんは いかがかな?」
「まずまず かな」と ウサギさん。
コヨーテおじさんは ウサギさんのせなかのかわぶくろが き
になって しかたありません。なんとかして なかみをききだ
そうと、
「たばこいれにしては おおきなふくろだねえ。よほどけむり
をすうのがすきとみえる。おいらにも すこしわけてくれない
か。そのからだでは そんなに すえるわけもなかろうが。お
まえさんはチビすけだし、おいらはみてのとおり からだもで
かいから」
ウサギさんは へんじをしません。
「いいじゃないか、このケチんぼうめ。あんまりよくばるん
じゃないよ」
ウサギさんは だまったまま あるきつづけます。
「よお、ながいみみをしたそこのあんた、きこえるだろ。せな
かにあるものを みせてくれっていっているんだよ!」
コヨーテおじさんが そういうと、ウサギさんも やっと く
ちをひらきました。
「きみがほしがるようなものなんて なあんにもないさ」
「おお、そうかい。じゃそのなあんにもないってやつをみせて
もらおうか?」
「やめたほうが いいとおもうよ。みたら かならずおこりだ
すだろうし」
ふくろのなかみがなにか コヨーテおじさんは しりたくてし
りたくて、がまんができません。
「たばこじゃなければ、なんだっていうんだい?」
そうやってなおも くいさがります。
ウサギさんがいいました。
「さっきもいったように、このかわぶくろに はいっているも
のを きみがきにいるとは とてもおもえないんだがねえ」
そのとき−−
いきなり コヨーテおじさんは がまんしきれなくなって ウ
サギさんのせなかから かわぶくろをうばいとると、なかを
のぞきこみました。
「うあああああああああああああーっ!」
かわのふくろには なんと ノミがぎっしりとつめられていた
のです。あまりたくさんのノミで、もうだれにもそのかずはか
ぞえることもできません。ノミたちはいっせいに コヨーテに
とびうつりました。
「ひえええええええええええええーっ!」
コヨーテおじさんは、しにそうになって あたりをころがりま
わり、じぶんを かきむしりながら、
「かゆいよーっ! かゆいよーっ!」
と ほえました。
ウサギが「だからいったじゃないか」とコヨーテにさけびまし
た。
そんなことがあっていらい、コヨーテのなくこえがあちこちか
らきこえるようになったのです。ノミたちにくわれて かゆく
てたまらずに、コヨーテは ないているのです。
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