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Tuesday, March 30, 2004

ひとが死ぬ理由 (物語)

ブラックフット一族につたわるお話

再話 北山耕平


  この せかいが できて、
  まだ まもない ころの ことです。
  
  おとこの かみさまと、おんなのかみさまが、
  さんぽをしながら はなしをしていました。
  
  「よの なかの きまり と いう ものを
  つくらねば なるまい。」
  
  「それはよいことだわ。で、どうするの?」
  
  「そうだな。わしが いいだしっぺになろう。」
  
  「そうね。そのかわりに、きめるのはわたしの しごとよ。」
  
  そうやって はなしながら ふたりは あるいていきます。
  

  
  あるとき、おとこの かみさまが くちを ひらきました。
  
  「かりの ことを かんがえていたんだがね。かりうどに な
  るのは、やはり おとこたちだ と おもうのだよ。どうぶつ
  たちに むかって やを いるときには、いつも その どう
  ぶつによびかける きまりに しよう。こえを きいて、どう
  ぶつたちがちかずいて くるようにな。」
  
  「おとこたちが かりうどに なるのはよい かんがえね。で
  も、こえを かけられて どうぶつたちが ちかずいてくるの
  なら、にんげんにとって、いのちを うばう ことはかんたん
  すぎるわね。どうぶつたちが、にんげんを みたら すぐ に
  げるようにしましょうよ。かんたんに ころせないように。に
  んげんも あたまを つかうように なるし、つよくも なる
  でしょうし。」
  
  「そりぁいい。やはり さいごは おまえに きめてもらった
  ほうが よいようだな。」
  
  おとこの かみさまも なっとくして、
  ふたりは さんぽを つづけました。
  
  
  しばらく すると、おとこの かみさまが
  また くちを ひらきました。
  
  「にんげんの かおのかたちの ことだがね。ふたつの めだ
  まはだな、かおの かたほうに ひとまとめに して、もう 
  かたほうには くちを おいて、くちが まっすぐ うえや 
  したへ うごくように するというのは どうかな。りょうて
  には ゆびを10ぽんずつ つけてさ。」
  
  「かおに ふたつの めと くちを つけるのは さんせいね。
  でも、めの ばしょは、かおの うえの ほうに よこに ふ
  たつ ならべるように して、くちを したの ほうの、かお
  のりょうほうに またがるように つけるほうが よいと お
  もうわ。かたほうずつの てに ゆびをつけるのは すてきな
  かんがえだと おもうけれど、10ぽんずつ というのは、ど
  うかしらね、おおすぎやしない? うまく うごかせるために
  は5ほんずつが いいんじゃないかしら。」
  
  「さいごに きめるのは おまえのしごとだからな。」
  
  
  そう やって ふたりは
  おおきな かわの ほとりまで きました。
  
  「いのちの ことも きめなくては なるまい。」
  
  おとこの かみさまが つぶやきました。
  
  「さて しぬ というのは、どう いう ことに するかな。
  そうだ、こう しよう。たまたま ここに、バッファローの 
  くそが ひとかたまり ある。こいつを こうやって かわに
  ほうりなげて、もし うきあがって きたら、にんげんが し
  んでも よっかごに いきかえって、いつまでも いきつづけ
  られるようにする。」
  
  おとこの かみさまは、バッファローの くそを
  かわにむかって なげこみました。
  
  みていると それは いちど みずの なかに しずんでか
  ら、じきに ぽかっと うかび あがってきました。
  
  「かわに うかぶか うかばないかで きめるのは いい と
  おもうわ。でも バッファローの うんちなんかで いのちの
  ことを きめるのは よく ないわ。わたしが この いしこ
  ろを かわりに かわに なげます。この いしが ういてき
  たら、いのちは しんだ あと、よっかめに いきかえって、
  えいえんに いきつづける ことに しましょうよ。もし、し
  ずんで その まま うきあがって こなければ、いちど し
  んだら もう、にどと いきかえらないように します。」
  
  
  おんなの かみさまは そう いうと、
  じぶんで いしを ひとつ かわに なげこみました。
  
  じゃぼん。
  
  いしは しずみました。
  
  いつまでまっても いしは にどと 
  うかびあがる ことも ありません。
  
  「こたえは でたようね。もし いのちが えいえんに なれ
  ば、ちきゅうは すぐに あふれかえって しまうわ。たべも
  のも たりなく なるでしょう。にんげんは しぬの。しぬか
  らこそ、おたがいを あわれむことも できるの。この せか
  いには あいてを おもいやるこころも うまれるでしょう。」
  
  
  このときは おとこの かみさまは
  ひとことも くちを ききませんでした。
  
  
  ときが ながれました。
  
  おんなの かみさまには こどもが できました。
  
  ふたりの かみさまは こどもが できた ことを こころか
  ら よろこび、その こを、とても かわいがりました。
  
  でも ある ひ、その こが びょうきに かかって、
  とつぜんに、しんで しまったのです。
  
  おんなの かみさまは なげきのなかで いいました。
  
  「ねえ、もう いちど、しぬとは どういうことかを、ふたり
  で きめなおしましょう。」
  
  しかし、おとこの かみさまは
  くびを ふって こう こたえました。
  
  「いや、それは できない そうだんだ。なぜなら これを 
  きめたのは おまえさんなのだから。」
  

【ブラックフット族】「黒い足一族」黒いモカシンをはくことからその名がつきました。カナダのアルバータ州からアメリカのモンタナ州にかけて、バッファローとともに生きる人びとです。

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Comments

この Story は 外国人の
ぼくには とっても よみやすかったです.ぼくは ひらがな
カタカナ よく よめますが
むすかしい かんじは まだ
にがてなんです.

すばらしい Story です
かんどうしました
本当に ありがとうございます

日本の ほん よみたいですが
かんじは わからないから
よめなっくて こまってます


おつかれさまです

Posted by: Mahesh | Thursday, January 14, 2010 at 06:21 AM

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